50万hitキリリク(Toいのこさん)
Draw & Written / 清水かえる

「班渠…」
差し伸ばした要の手に、班渠が鼻を寄せて嬉し気に咽を鳴らした。
「懐かしい…覚えていてくれていたんですね」
班渠の毛並みを撫でながら、要が呟く。
「前は、まだ班渠の大きな顎が頭の上にあった…」
「あの頃の泰麒はまだ小さくておられた」
景麒の淡々とした言い方に要が小さく笑うと、班渠も一緒になって忍び笑いを漏らした。憮然とした面持ちになる景麒に、要は朗らかな声で答える。
「はい、そうでした。あの頃、僕は本当に小さくて、何も手が届かなかった」
そしてそのまま班渠を見下ろした。柔らかく撫でていた手が、何かに思い至ったかのようにふっと止まる。
「でも、今は、班渠を見下ろしている」
「…………」
「それだけの時が、流れたんですね」
伏せていた瞳を上げて、要は景麒を見た。穏やかな表情に、静かな意志と淡い微笑みを浮かべて言う。
「そして僕は戻って来れた」
再び、班渠をひと撫ですると、要は両手で包み込むように班渠の頭を捉え、その鼻先を自分の額にあてがった。
「また会えて嬉いよ、班渠…」
まるで懐かしむように甘えるように、小さく鼻を鳴らす班渠と瞑目する要を、景麒はただ黙って見下ろしていた。