光差す波間
作:央野マヨコ
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「すいません。先ほどの堤税のところ、もう一度説明していただけますか?」 おっとりした供麒の言葉に、眼前で税の報告をしていた官はわずかに眉をひそめた。 「この件に関しては、先日もご報告いたしましたが」 「ああ、すいません。私は物覚えが悪いみたいで・・・。もう一度説明していただけないでしょうか」 すまなそうな供麒の言葉に、官はそれ以上言えずに目をそらして書類に目を落とす。 その落ちつかない眼差しと、かすかに強張った頬に供麒はほんの少し不審を抱いたが、追求することはしなかった。 疑うのは苦手だ。 こうして官の報告を丁寧に聞き、周囲の声のひとつひとつに耳を傾けていれば、不正など起こらないはずだ・・と供麒は思っている。 『供麒は少し、人よりおっとりされているようじゃ。何事も慎重になさるよう心がけられませ。分からないことがあったら、何度でも聞かれませ。遠慮なさることはない。ご自分で納得がいくまで、聞くのですぞ』 幼い頃、玉葉に言われた言葉を供麒は今でも守っている。 供麒は再び、目を凝らしてその難解な書類に目を落とした。 読みづらい字だな・・・そういえばここからの報告書はいつも・・と思いかけ、はっと我に返って書類に集中する。 供麒は辛抱強い方だったが、やはり単調な報告を何時間も聞きつづけるのにはうんざりしてしまう。 些細な質問をいくつも挟みながら聞くので余計時間がかかってしまうのだが、だからといってよくわからないまま聞き流すわけにもいかない。 これが主である珠晶だったら、この三分の一くらいの時間で処理を終えてしまうのにと情けなくなるが、あいにく珠晶のような聡明さは持ち合わせてないので仕方がない。 自分の取り柄は気が長いところなのだから、せめて少しでも丁寧に着実にこなすことが自分の本分なのだと思っている。
こうして、雲海の風に吹かれながら空を見るのが好きだった。 供麒は刺すような夏の光がさしこむ空を、薄目を開けて見つめる。
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